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ビジネスに役立つインタビューをWEBで連載中!!

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クライアント様はもとより、通訳者、翻訳者などのパートナーの皆様と、よりインタラクティブな関係をもちたい。そんな願いで開いたコンテンツです。
毎回、様々な業界でご活躍のかたにご登場頂き、様々な角度からお話を伺っております。

酒匂暢彦さん プロフィール

横浜国立大学経済学部卒業後 日本ビクター(株)入社
同社広島営業所で営業、ビデオ事業部で商品企画、本社宣伝部で宣伝などの業務をへて同社退社。
ソフト会社勤務を経て、1997年(株)クロックワークスを設立、代表取締役就任。 現在に至る
主な配給作品「少林サッカー」「ブレア・ウイッチ・プロジェクト」「アタック・ナンバーハーフ」「ラブストーリー」など
 

今回、酒匂さんにご登場をお願いしたのは、私たちの通訳、翻訳という仕事もコンテンツビジネスに位置づけられますが、独立系の映画配給というコンテンツビジネスの仕組みについて知らない方も多いと思いますので、そのあたりの話をご紹介していただきたいということが一つ。また、酒匂さんは7年前に現在の会社を設立されたのですが、そういった意味で、ベンチャー企業を成功させるために大切なこと、そして、翻訳業としての字幕スーパーや、グローバルに海外をベースにビジネスをしていくためのノウハウを伺ってみました。

001. 会社を起こしたときの不安感は一切なかった

桃原 今日、インタビューの前に『ラブストーリー』を観てきたんですが、朝一から立錐の余地なく立ち見でした。ヒットを連発されていますが、映画配給会社を興そうと思われたのはどういうきっかけだったんですか。

酒匂 もともと私自身がエンターテインメントに関連した仕事をしたい、いわゆるマスコミ志望の学生だったんですよね。テレビ局とか出版社とか広告代理店とか受けまくって落っことされて、で、しょうがなく入ったのが日本ビクターでした。最初は広島に飛ばされて、いわゆるパパママショップといわれる小さい電気屋さん相手の営業でした。2年ほどして、VHSを開発したビデオ事業部というところで商品企画と宣伝の仕事をやって、その後本社の宣伝部に配属となったんです。ただやっぱり、エンターテインメント、もしくはメディアに関係するような仕事をしたいなと思って転職しました。その転職先で、たまたま、映像・映画関係の部署に配属されたんです。でそこに4年半いる間に、今うちにいる役員2人と知り合って、で、なんかあったら一緒にやろうかなんて話をしてたんですが、それが進んでいって97年に会社を作ったんです。

桃原 今でこそコンテンツビジネスって、大変注目されていますが、その当時そういう勝算があって会社を興されたんですか。

酒匂 不安感は一切なかったですね。7年前というのはレンタルビデオのビジネスがまだ良かったんですね。割とマーケティングのしやすいビジネスなので、変な上司とか組織とかに阻まれずに、自分たちのマーケティングの手法で正しいことをちゃんとやればなんとかなるだろと思ってました。やはりそれは間違っていなくて、初年度から黒字でしたし、売上げも設立初年度の半期決算で5億円ぐらいあったんですよ。今思えば綱渡りだった局面もたくさんありましたけど。

桃原 このごろ小さいけれどユニークな作品を上映する中小の独立系配給会社が増えてますよね。そういうところも同じやり方なのですか。

酒匂 クロックワークスという会社は、最初はレンタルビデオの販売からスタートしたんですけど、自社で配給しているし、自社でビデオも出してるし、自社でDVDもやってるんですよね。だけど、販売しかやらない会社、配給しかやらない会社とかいろいろあるんです。最近は、ビデオとかDVDビジネスも立ち上がってくるに従って、ビデオだけをやる会社も相当たくさんあるんですよ。

 

002. もう1回セールスするマーケットがある

桃原 それが、配給の方に舵を取るようになったのは、何か戦略とかあったんですか。

酒匂 もともと、社員全員、配給志向が強かったんです。映画本来のビジネスモデルを考えると、作る・配給する・ビデオ、DVDを出す、テレビで放映するという流れがあるんで。やっぱり風上から風下までで、特に風上の方に行かないと利益率が高くならないだろうと思っていたのと、やっぱり配給が一番大変だけどやりがいがあるところではあるんです。

桃原 ということは、配給でいい作品だといった評判が確立されて、その波及効果としてビデオなり、DVDの売上げにつながるわけですね。

酒匂 そうです。そうです。つまり、配給っていうのはマーケティングの場であり、プロモーションの場でもあるんですよね。今まで、大コケしたとかいう映画はたくさんあるじゃないですか。あれはビジネスチャンスが映画館しかなかったからです。今は、お客さんの側にこれは劇場で観よう、これはレンタルで、これはDVDも買おう、という選択肢があって、あらかじめある程度決めてるわけですね。つまり劇場でダメでも、もう1回セールスするマーケットがあるということです。なおかつ、レンタルショップやセルショップには必ずコンピューターが入っているので、我々が作品を買う前にある程度マーケットのサイズをデータで分析できるんですよ。

桃原 外れちゃったなという作品ありますか。

酒匂 ありますね。ただ、データの読みが外れるっていうことだけでなく、創業時一番赤字を生んだ作品は、買った時の為替レートが100円以下だったんです。で、ドル建てですから払う時に120円台だったんですね。それだけで3〜4千万円の差が出ましたね。その分丸々赤字だったんですよ。もちろん見込み違いという作品もありますよ。

 

003. データを判断するトレーニングとか皮膚感覚が必要

桃原 今、全世界的にコンテンツが非常に不足しているって言われてますよね。競って売れるコンテンツ探しをしてる中でどうやって、これいけるっていうのを嗅ぎ分けていくんですか。

酒匂 うちの強みは、大きいところと違って、少人数なのでみんなで情報を共有できるっていうことですね。加えて、努めて会社運営的に考えているのは、一人の人間が兼業体制でやることです。たとえば、うちの国際部の古井戸にしても、買い付けだけを10何年やっているわけじゃなくて、前の会社でレンタルビデオの営業をしてますから。そうすると営業の現場で、作品のバリューっていうのがだんだんわかってきますよね。それから彼女は宣伝もやっていたんですよ。雑誌社周りとかテレビ局周りとかしているわけです。そういう体験があるので、買い付けの場に行っても、これはビデオでは何本ぐらい売れるとか、どこの劇場にかかるとかというマーケティングが自分なりにできるんです。そういう判断をしつつ我々に作品の情報をフィードバックしてくるんです。それを受ける我々としても、買い付け先である海外のマーケットに、社員の中から順番で一人ずつ行かせてるし、古井戸が持ってきた作品についてどうかというのを全員で議論するんです。この作品は30万ドルだけどどうなの、40万ドルでもいけるとか全員で判断するようにしています。一人一人がいろいろなスキルを持って、守備も攻撃もやるという体制を作っているんです。それによってマーケティングの精度を高めているわけです。データは大事なんだけど、それを判断するトレーニングとか皮膚感覚が必要なんです。日々トレーニングです、なおかついろんな仕事を兼業することで個々のスキルを上げていくんです。これが大手だと、部署が分かれていて、失敗したりすると責任のなすりあいになったりするわけです。たとえば2対8というように意見が割れて、少数派の2の方の意見で買うこともあります。ただ、そういう時には、少数派の彼らは何故いいかというのを一生懸命説得して、お互い議論に議論を尽くして作品購入を決めるわけです。だから失敗しても成功しても、全員で要因分析しないといけないし、それが次につながるんです。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がわかりやすい例なのでよく話すんですけど、あの作品を買えたのは、古井戸が、ある映画会社の知り合いから試写会の招待状をもらったんです。でその映画会社とは『キューブ』という作品を扱った時に、小さい会社が良くやってくれたと認めてくれて仲良くなった会社だったんですね。でその『キューブ』を紹介してくれたのは、『キューブ』が上映されたトロント映画祭に、そのとき古井戸は行けなかったんですが、ある映画会社の副社長が、トロント映画祭では『キューブ』が良かったよと教えてくれたんですけど、それはよさそうだ、買いに行こうとなって『キューブ』を購入したんです。この話はまだたどっていくと続きもあるんですけど、つまり、わらしべ長者みたいな話なんですね。こういった形で人と人のつながりで情報を入手するということが多いんですよ。ものすごいアナログな部分が大事なわけです。かつ、ベリーベリーウェットです。

桃原 そのアナログな人間関係を作るには何が大事だと思いますか。

酒匂 基本的には、嘘をつかないとか、単純にお客さんと飯食いに行って酒飲んでみたいなことです。典型的な例で言うとカンヌ映画祭。外人の方はパーティが好きじゃないですか。毎日朝の3時、4時までパーティやってるんです。うちの買い付けチームは、それに毎日付き合うわけですよ。カンヌっていうのは映画のバイイングの場でもあるんですよね。

桃原 次に来るのはどんな映画だと思いますか。

酒匂 ひとつはタイ映画だと言われてるんですよね。タイではCFの制作とかで経験を積んできた人たちが増えてきて、格段に製作コストが安い割にいいものが作れる環境になってきてます。うちでも、この夏に全国公開するアクション映画があるんですけど、それはCGとかワイヤーとか、映像的なテクニカルなものは一切使わず、生身のアクションで勝負してるんです。『マッハ!』っていうんですけど、その作品の話をうちの長男にしたら、それってCGでしょって言うんです。やっぱり子供でさえCGで作られたものに飽きちゃってるんじゃないかな。

桃原 そういえば中国はどうですか。

酒匂 中国はねぇ、多分狙ってるのは私だけです(笑)。中国が最大の市場になるのはもう目に見えてるんですよ。けど、こんなに難しいところは多分ないですよ。権利ということには非常に意識の薄い国ですから。一番の問題は海賊版です。アジアでは、権利も全部の国に同時に売らないと次の日から海賊版が出ると言われているぐらいですから。ただ、どうにかできないかなと思ってはいるんですが。韓国はかつて同じような状態だったのに、このままではまずいということに気づいて変わってきましたから。作品の権利を守らないと自国の作品も守れないですからね。