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ビジネスに役立つインタビューをWEBで連載中!!

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毎回、様々な業界でご活躍のかたにご登場頂き、様々な角度からお話を伺っております。

吉田智則さん プロフィール

法政大学卒業後、全日空商事(株)入社。
航空機部品部で航空機部品の購入業務等に従事した後、退職。オーストラリアで2年間、ビジネスカレッジ等で学び、家業である日本酒造りの道へ。
吉田酒造(株)で、昔ながらの製法で手間と時間をかけ、厳選、吟味された原材料を使用し醸された『月山』の味わいは、全国新酒鑑評会で5年連続を含む2桁の金賞受賞歴が物語っています。

吉田酒造(株)HP http://www.e-gassan.co.jp


 

今回ご登場いただいたのは、島根県で文政9(1826)年からこだわりの酒造りを続けている酒造蔵の、次代を担う吉田智則さん。史蹟の銘酒『月山』の伝統を継承しながら、海外への販路も拡大していられる吉田さんに、酒造りのこと、日本から世界へ発信することについてお伺いしました。
(インタビュアー M&PI 桃原則子)

001. 約180年の歴史をもつ酒造りと島根の食文化の関係

桃原 吉田さんのお宅は、約180年の歴史を誇る酒造蔵と伺いました。日本の伝統文化の中に育った方ってどんな方なのか興味をひかれました。

吉田 文化といっても、日本酒業界では文化的なことって薄れてきてもいるのですが・・・。うちでは『月山』という酒を造っています。島根県東部の中山間地に在って、ここは昔から緑豊かな土地なんですよ。戦国時代に山陰地方を統治していた尼子氏が月山富田城を置いた広瀬町という所で、酒名もここからきています。

桃原 材料にも、当然のことながらこだわりがあるとか。

吉田 大吟醸は、兵庫県産の酒造好適米では最高峰と言われている「山田錦」という米、純米吟醸・吟醸・純米酒などは、地元島根県産の「神の舞」「五百万石」「佐香錦」等を使っています。仕込みの水は、「不昧(ふまい)流茶道」で最高の名水といわれた「お茶の水井戸」を復元して使用しています。それに、その年ごとの気候に対応するため、やや硬度の高いわき水をブレンドしているんですよ。

桃原 味的にはどんな狙いがあるのでしょう?

吉田 お酒の味というと端麗辛口が思い浮かびますが、島根県の酒は芳醇甘口(うまくち)という部類に入ります。お酒はその土地の食文化と切り離せないので。

桃原 島根の食文化というと?

吉田 島根の刺身醤油を召し上がっていただくとわかりやすいのですが、たまり醤油っていう非常に濃い醤油なんです。お酒もそれに負けないような味になっていくので、端麗辛口だと薄すぎるんですよ。だから島根ではお酒というと、昔から濃い味なんです。

 

002. 島根の味そのままで東京でも勝負をしたい

桃原 じゃあ、新潟のお酒とはかなり違いますね。

吉田 日本酒に、新潟のお酒のイメージを抱いている方には「味がちょっと濃いね」といわれることもあります。

桃原 東京などでは、端麗辛口の方が一般的に飲まれているようですが。

吉田 島根の蔵元でも東京向けの味に変えているところもありますが、それでは地酒の枠を超えているのでやりたくありません。島根の味で打って出たいんですよ。そのために、味の有る酒でも切れをよくするとか工夫しています。それに、端麗辛口だけでいくと焼酎と重なってしまうんです。「いい焼酎を飲むと日本酒の味がする」と言ってらっしゃる方は、たぶん新潟の端麗辛口のイメージで焼酎を飲んでいらっしゃると思うんです。

桃原 焼酎ブームも続いていますが、今、女性を中心に吟醸、大吟醸もブームになっていますよね。そういう大吟醸などでも、濃い目の甘口というのは造れるものですか。

吉田 造れます。普通、大吟醸っていうと香りだけとか、味がすっきりしすぎているとかあると思うんですけれど、島根の大吟醸は味と香りのバランスを非常に重視しています。

桃原 それはおいしそうですね。大吟醸って香りにより過ぎるきらいがあるようなので・・・。

吉田 一時期、すごく香りの高い酒がはやったんですよ。本醸造を飲んでも吟醸の香りがするような。そういうものはお酒単体、例えば試飲などで飲むと「美味しいね」って言われると思うんですけれど、決して料理に合うようなものではないんですよ。日本酒って単体で飲むものじゃなく、間違いなく横には料理がある。

桃原 そうですね。では料理に合う日本酒という意味では力を置いているのは?

吉田 純米と純米吟醸です。

 

003. 日本酒の美味しさを日本料理と共に世界へも

桃原 『月山』は海外へも市場を伸ばしていますよね。

吉田 ロサンジェルス、ボストン、ニューヨーク、香港、台湾・・・などですが、まだそれほど多くありません。アメリカが伸びつつあって、台湾がどうなるかというところですね。

桃原 海外では、どんな味が人気でしょう? やはり大吟醸かしら。

吉田 そうですね。海外でもまず大吟醸から売り込んでいこうっていうのがあるんです。まず、美味しいって思わせないと後が続かないですから。一番いいお酒を飲んでもらって、日本酒ってこんなに美味しいものだと。

桃原 感触はどうでしたか?

吉田 去年の試飲会では大吟醸から種類をそろえたのですが好評でした。「ワイン、ライスワインだ!」という反応ですね。フルーティさが好まれるようで、「これ何のフルーツ使っているの?」なんて聞かれます。

桃原 価格的にはどうなんでしょう?

吉田 送料や税金もかかるので、アメリカで2、3倍という感じでしょうか。高級品ですよ。台湾でも高級なところを狙っています。今まで海外で日本酒というと、月桂冠のような大衆向けがメインでしたが、それとは違う路線です。

桃原 アメリカではカリフォルニアの長粒種米を使った、値段も味もほどほどな日本酒がありますけど、それとは違ったカテゴリーというわけですね。

吉田 違うものだっていうことを、はっきりさせたいですね。

桃原 マーケット的にはいかがですか?

吉田 今は寿司関係ですね。この前、ドイツに視察に行ったのですが、やっぱりソーセージでは日本酒は飲みたくない(笑)。以前、どこかの蔵の若い人が日本酒をリュックに入れて、フランスの三ツ星レストランに売り込みに行った話を新聞で読みましたが、やはりフランス料理ではワインには絶対かなわないと思うんです。

桃原 やはり日本酒には日本食がいいと。

吉田 今、日本食は世界各国どこにでもありますし、健康食としても人気がありますから。日本食以外にも開拓していくべきだとは思うんですけれど、基本的にはそこで育った酒には勝てないですね。

桃原 去年2年ぶりにパリに行って、本格的な日本食レストランが増えていたのに驚きました。お店のテイストも若い人が来る感じで、日本人よりフランス人の方が圧倒的に多かったのが印象的でした。だけどでてくるお酒が、大衆向けだったりしたので、販売ルートさえ確立すればマーケットとしてありそうですね。

吉田 そう思っています。

 

004. 海外からもう一度日本酒の基本を見つめ直す

桃原 先ほど、台湾を狙っているというお話でしたが、経済が活性化している中国はどうでしょう。

吉田 中国ですか。台湾の人も言葉が通じる自分たちでさえ怖いから、直接ビジネスするのは絶対すすめないっていうんですよ。でも、その台湾のパートナーが中国に多少出していきたいとは、思っているようです。

桃原 中国ってやはりそうなんですか。

吉田 今は特にそうらしいですね。政治の問題もあって、日本人を全く信用していないそうです。

桃原 ある意味、ラブ&ヘイトですよね。日本製品は大好きなんですから。

吉田 そうなんですよね。海外ではアジア人同士としてすごく仲良くなるんですけど、国同士のからみでは微妙な話がでてきます。

桃原 今後の展開として、その国の食文化を生かした日本酒を造るということはお考えですか?

吉田 そこまでマーケットがないんです。例えば、お酒を仕込むにしても何リッターと仕込むわけですから。確かに大きな蔵は、海外志向のお酒を造っているところもあります。すごいお蔵さんには、1年中海外を歩いていらっしゃる方もいますし。